(010) 苦悩を乗り越える一つの方策
人は生涯の内に、大なり小なり何らかの苦悩を味わうものである。肉体的苦悩・精神的苦悩とさまざまである。その時人それぞれに、意識しようとしまいとそれを乗り越える方策を考えるのであろう。その方策の一つとして、ある人から次のような話を聞いたことがある。
『(今受けている私の苦悩は、他の人は味わうことはできない。この苦悩を味わうということは、人よりも多くの経験をすることであり、私の一生はそれだけ豊かなものである。)と、意識的に正面からそれを受け入れることによって乗り越える。』
なかなか難しいことかもしれないが、苦悩そのものを客観視することで自己の苦痛を和らげる、という一面を持っているのではないだろうか。ややニヒリスティックな印象も受けるが、これに対して他人がどうのこうのという資格はない。
誰にとっても苦悩からは早く抜け出したいのが人情である。